関節リウマチの治療方法は?

くすりのはなし

本記事は、関節リウマチの治療方法についてわかりやすくまとめています。
治療方法を理解するためには、関節リウマチの病態を理解する必要がありますので、
前回投稿「関節リウマチってどんな病気?」も合わせて確認してみてください。

関節リウマチの治療方法は?

🟠現在では、効果の高い薬を使う治療が中心です。1)

以前の関節リウマチ治療は、薬で炎症や痛みを抑えたり、悪くなった関節部位を手術で取り除くくらいしか手立てがありませんでした。
しかし、関節リウマチ治療の中心薬として使用される薬のほか、生物学的製剤という分類の治療薬が登場し、炎症や痛みを抑えるだけでなく、病気の進行を食い止めて関節が破壊されるのを防ぎ、患者さんの生活の質を高める治療ができるようになってきました。
現在では、こうした薬を使った治療 ( 薬物療法 ) を中心に、リハビリテーション、手術などを、必要に応じて組み合わせて治療を行うのが一般的です。
最新の関節リウマチの治療では、関節リウマチの活動性をみながら、寛解 ( かんかい ) を目標に治療をします。どうしても寛解に入らない場合でも、ある程度、炎症がコントロールできる状態 ( 低疾患活動性 ) を目標にして治療をします。このようなやり方は、「目標達成に向けた治療 ( treat-to-target ) 」とも呼ばれます 

関節リウマチの薬物療法は?

関節リウマチの抗リウマチ剤と非ステロイド性消炎剤を基本として、症例によってはステロイド剤、免疫抑制剤、生物学的製剤が用いられます。補助療法として、ステロイド剤やヒアルロン酸製剤の関節内注射が行われることもあります。

1)非ステロイド性抗炎症薬
2)副腎皮質ステロイド
3)抗リウマチ薬
4)生物学的製剤 

非ステロイド性抗炎症薬【NSAIDs】

この薬は、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害して、痛みに関連するプロスタグランジンという物質ができるのを防ぐことで、関節リウマチの痛みや炎症を軽くします。ただし、疾患の進行を抑える作用はありません。副腎皮質ステロイド

副腎皮質ステロイド

活動性の高い関節リウマチに対して、抗リウマチ薬の補助として用いられます。速効性のため、日常労作を改善することができます。ただし、ステロイドを長く使っていると、糖尿病骨粗しょう症白内障感染症などを合併しやすくなるので、抗リウマチ薬が効き始めたらすみやかに減量、もしくは中止します。中止する場合は、離脱症状が出現する恐れがあるため、漸減的に減量していきます。

抗リウマチ薬

関節リウマチ治療の主体となる薬です。関節リウマチの免疫異常を調節したり、抑制することで効果を発揮します。効果が現れるまでは非ステロイド性抗炎症薬やステロイドが併せて用いられますが、効果が出始めたら、それらの薬は止めることもできます。
また、治療効果を高めるため、抗リウマチ薬を2剤以上併用することもあります。

どの抗リウマチ薬も効果の程度に個人差がありますが、抗リウマチ薬の中には、有効率が高く、関節破壊の進行を遅らせることができ、リウマチ治療の中心薬として使用されている薬剤もあります。関節リウマチと診断を受けたら早期に十分に有効と考えられる抗リウマチ薬を投与することが必要とされています。ただし、骨髄抑制、肝障害、間質性肺炎などの重い副作用が起こることがあるので、定期的に検査を受けながら服用することが大切です。

生物学的製剤

生物学的製剤は、炎症性サイトカインのTNFαIL-1IL-6やT細胞などを標的として炎症を抑え、軟骨や骨の破壊の進行を大きく抑えることのできる薬です。抗リウマチ薬の効果が不十分な場合に用いられ、点滴注射や皮下注射で投与されます。わが国では、平成15年に抗TNF製剤が登場してから、現在までに12種類2)の生物学的製剤が使用可能になりました。患者さんが自分で注射できるキットも登場し、より便利な使い方ができるようになっています。また、最近では特許期間が満了した生物学的製剤の後続品で薬価が安いバイオシミラーも発売されています。

一方で、感染症を始めとする副作用や、高価であることなど、いくつかの問題点もあります。生物学的製剤の使用や、ほかの薬との使い分けなどについては、専門医の知識が必要です。

治療薬の分類主な薬剤名特徴副作用
非ステロイド性抗炎症薬ロキソプロフェン
ジクロフェナク     
エトドラク
・シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害により鎮痛・抗炎症作用を発揮
・疾患の進行を抑える作用はほとんどない
胃腸障害、腎障害、肝障害など
※成分や製剤の改良により、副作用を減らす工夫がなされている薬剤もあります。
副腎皮質ステロイドプレドニゾロン    ・抗炎症作用・免疫抑制作用により炎症を改善
・中止の場合は、離脱症状が出現する恐れがあるため、漸減的に減量
糖尿病、骨粗しょう症、白内障、感染症など
抗リウマチ金チオリンゴ酸ナトリウム(シオゾール)
オーラノフィン(リドーラ)
ブシラミン(リマチル)   
サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN)
D-ペニシラミン(メタルカプターゼ)
ロゼンザリット(カルフェニール)
アクタリット(オークル,モーバー)
レフルノミド(アラバ)
メトトレキサート(リウマトレックス)
ミゾリビン(ブレディニン) 
・自己抗体産生を抑制、免疫複合体を減少させる作用あり
・遅効性で、効果発現までに1〜6ヶ月かかる。
・メトトレキサートは白血病治療に比べて少量
・休薬期間が設けられている。
・関節リウマチの場合は、1週間単位の投与として6mg
・メトトレキサートの副作用予防に葉酸(フォリアミン)
発疹、タンパク尿、肝障害、肝炎、間質性肺炎、感染症、血液障害など
※薬剤により、副作用の種類も異なります。
生物学的製剤インフリキシマブ(レミケード)・起炎物質であるTNF -αを中和するモノクローナル抗体
・投与後中和抗体ができて効力が低下するため、予防目的としてメトトレキサートとの併用が必須
感染症 ( 上気道感染、肺炎など )
関節リウマチ治療薬一覧

リハビリテーション

リハビリテーションには、運動療法、理学療法、作業療法、補助具を使った療法などがあり、これらを通してからだの機能を回復していきます。リウマチ体操 ( 下記図) は運動療法の基本で、理学療法とあわせて、毎日行うことが大切です。運動には、ストレスを軽くして免疫力を高め、関節が固まるのを予防する効果があります。無理のない範囲でからだを動かしましょう。

「理学療法」とは水や温熱、光、超音波などの刺激を利用し、痛みを和らげたり、血液の循環をよくする療法です。もっとも多く利用されるのが「温熱療法」ですが、「温めるべきか」「冷やすべきか」の選択はケースバイケースです。

手術療法

滑膜切除術

かつては、炎症が激しい関節の滑膜を切除する手術がよく行われました。しかし、最近では早期から十分な薬物療法を行うようになったため、あまり行われません。

人工関節置換術 

ひざや股関節などを人工の関節 ( 図14 ) に入れ替え、そのはたらきを再び戻すようにする手術です。最近では人工関節の材料なども改良され、耐用年数も大きく伸びています。医療技術の進歩により、かつてはあまり行われなかった高齢の患者さんでも、積極的にこの手術が行われるようになりました。

関節固定術

リウマチが原因で、頸椎 ( 首の骨 ) に変形などが起こることがあります。これを放置すると、神経が圧迫されて手足のしびれや麻痺が出たり、ひどいときは突然死の原因ともなります。それを防ぐために、頸椎を固定するための手術を行うことがあります。

以上、関節リウマチの治療方法の解説でした。
医療従事者の方は、関節リウマチの患者さんと接することがあるかと思いますので、治療方法を理解した上で説明するとで、患者さんの不安が軽減できると思います。
日々の学習に役立てて頂けると嬉しいです。

参照文献
1)あゆみ製薬株式会社 リウマチ情報
https://www.ayumi-pharma.com/ja/healthcare/rheumatism/library/cure/index.html
2)日本リウマチ財団
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/tr_biologics5.html

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